2010年12月17日
EARTHSCAPE 団塚栄喜さんインタビュー
嘉原:
団塚:
:ランドスケープデザイナー:
今回の作品「別府解体」のプランは、どのようにして生まれたんですか?
土を利用して作品をつくるには、足し算も引き算もしないような在り 方がいいなと思いました。それで、土で何ができるのかと考えた時に、もう掘ることしかなかったんですね。掘り始めたらどこまでも行くしかない。温泉がでるまで(笑)。
掘る作業をしていた時に、トラブルなどはありましたか?
もちろんいろいろとありました。
部屋の中央に、どこまでも、温泉が出るまで真っすぐ掘ろうと決めて、スタッフはひたすら作業。使用した道具は、考古学調査のための道具と全く同じものです。僕は何十mも掘ろうと考えていたんだけど、掘り始めたらすぐに地下水が出てしまいました。でも、この穴くらい掘っただけで、袋64個分の土と、加えて、土の中から出て来たものがここに展示しきれないくらいあるんです。その量や、内容をみて、採掘したものを使ったインスタレーションを考えました。
団塚さんの作品には、細部を見て全体を感じるというか、そういう共通項がありますね。
今回も色んな貝殻や、何かの骨が出て来たりしました。
小さいものほど面白い情報が詰まっている気がした。
そういうことを気づかせるような展示方法を考えました。
あの穴はどれぐらいの日数で掘れたんですか?
だいたい1週間くらいで。色んなものが出てくるんですが、
それを考古学という言葉で括ってしまったらそこで想像力
が止まってしまう。だから、考古学という言葉を使わずに、
作品のコンセプトなりタイトルを考えました。
それで、「ターヘル・アナトミア」から想を得て「別府解体」
にしたんです。単純に、掘り出したものを分類し、陳列して、
コードネームを付けるだけで、見えてくるものがあるだろうな
と思い、それをシンプルに言葉に置き換えると、「別府解体」
だったんですよね。
もっと深く掘っていたら、作品の印象も変わっていくのでしょうね。
そうそう。そんなに水位が高いとは思わなかったから。本当はもうちょっと掘りたかった。ただ、あれぐらいを越えると物が出てこなくなったんですよ。まず、この場所での生活の痕跡が始めに出てきました。以前は他の誰かが暮らしていた生活や文化の痕跡というのがあって、そこからまただんだん掘り進めて行くと、貝が出て来たりする。もともとはここが海だった、という記憶が出てきて、それ以上掘って行くと、何もなくなってくるんですよね。つまり、どんどん昔の海の底に近づいていくんでしょうね。
記憶の層というものが感じられて面白いですね。作品について、もう少し詳しくお聞きしたいです。
インスタレーションとしては、単純に1m角で掘り下げ、そこにあるものを分類して陳列しただけなんですね。誰が見ても分かりやすいけれど、見た人それぞれの感じ方が違うように、見方の順番もなく、好きなように見てもらえるよう展示しました。そして、その感情や感想を持ち帰ってもらい、いろんな時間軸、自然と自分たちの暮らしの関係、昔の人の生活様式とか、自分が今生きている、別府という場所、あるいは、自分が生きている意味や命の連鎖についてとか、そういうことまで考えるきっかけにならないかなと思ったんです。
この作品は今後どうなっていくのですか?
最後は穴を埋めて更地に戻します。どんな作品もそうですが、形あるものは最後なくなってしまって、僕ら自身も形がなくなって消えてしまう。そして、記憶だけが残る。物質としての作品をつくることが大切なのではなくて、それぞれの気持ちの中、心の中に重要なことがあって、それに気づくことそのものが作品だと思います。感動したり感じたりすることというのは、自分の中にあるわけですよ。だから、物質としての作品をつくらずとも、そういうものを引き出すことができるのではないかなと思いました。
れでは、今後の別府での活動についてお聞かせください。
xその場所ごとに合わせた「ベップスペシフィック」な作品を、これからもつくっていけたら面白いですね。もしかしたら、来年のベップ・アート・マンスかもしれませんし。何か、次の機会を与えていただければ是非やりたいですね。
これからもよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
※作品の「別府解体」
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Posted by パピプベップ at 17:36│Comments(0)
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